アリスとウサギ
理科教師がフレミングの法則を説明するのと同じように独自の法則を説明し出す。
「女はさ、気のある男に徐々に寄っていくもんなんだよ。だから俺は一歩も動かずに、誰が近づいて来るか観察してたってわけ。で、来たのが……アリス」
喋りながらグラスを持ったウサギは、名前を呼びながらアリスのグラスにカチンと自分のグラスを当てた。
アリスは自分の言動を全て分析された気になって、何とも言えない恥ずかしさに襲われた。
ウサギを気にしていたことは確かだった。
読まれている。
こいつの前で、下手な行動はできない――。
アリスはグラスに何杯目かのカシスソーダを飲み干し、唇を尖らせ呟いた。
「やっぱホストじゃん」
直後ウサギの手が顔に寄ってきて、顎に指が添えられ親指で唇の横を拭った。
指がやけに温かく、そこから体中に熱が巡った。