アリスとウサギ

 指は何か滴のようなものをすくったらしく、指が通った跡がヒヤッとした。

 ウサギは指をペロリ。

 その行動にドキリ。

 アリスは鼻の奥を通るホルモンの暴走をグッと抑え込んだ。

「そうやって毎日女を騙してるの?」

 カクテルを一気に飲んだからか、力んだからか、顔が熱くなったのを感じた。

 ウサギはタバコに火を付けながらクスクス笑っている。

「そうだよ」

 フッと吐かれた煙の香ばしい匂いが心地良いと感じた。

 認めやがった……!

 アリスは騙す手管を使用されたことに憤りを感じずにはいられない。

 なのにタバコをくゆらせる姿をセクシーだと思ってしまうのは、酒のせいにしようと思った。

 悔しさも芽生え、憎まれ口を叩きたくなる。

「タラシウサギ」

 それを聞いたウサギはまた、楽しそうに目を細めた。

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