アリスとウサギ

 お金を集めている時、アリスは見てしまった。

 ウサギのブランド物の長財布に、軽く20万円は入っているのを。

 やっぱりこいつ、ただ者じゃない。

 否定はしなかったし、ホストだという線は更に有力になった。

 何食わぬ顔で三千円をメンバーに渡したウサギは、テーブルに放っていたタバコをポケットに収め、男子の群へと混ざる。

 ぞろぞろと居酒屋を出た一行は、二次会の相談を始めた。

 アリスは何となく話し合いに割り込めず、傍観。

 そこでウサギが少し大きな声を出す。

「じゃ、俺仕事行くから」

「おう、頑張れよ」

「またねー」

 バイトではなく仕事だという。

 誰もそこを気にしていないようだが、アリスはこの部分にもただ者じゃない空気を感じた。

 場を去ろうとするウサギと、ふと目が合う。

< 23 / 333 >

この作品をシェア

pagetop