アリスとウサギ
お金を集めている時、アリスは見てしまった。
ウサギのブランド物の長財布に、軽く20万円は入っているのを。
やっぱりこいつ、ただ者じゃない。
否定はしなかったし、ホストだという線は更に有力になった。
何食わぬ顔で三千円をメンバーに渡したウサギは、テーブルに放っていたタバコをポケットに収め、男子の群へと混ざる。
ぞろぞろと居酒屋を出た一行は、二次会の相談を始めた。
アリスは何となく話し合いに割り込めず、傍観。
そこでウサギが少し大きな声を出す。
「じゃ、俺仕事行くから」
「おう、頑張れよ」
「またねー」
バイトではなく仕事だという。
誰もそこを気にしていないようだが、アリスはこの部分にもただ者じゃない空気を感じた。
場を去ろうとするウサギと、ふと目が合う。