アリスとウサギ
不安が膨らみ涙がこぼれる。
ウサギは親指でそれを拭い、自分のシャツのボタンを外し始めた。
「俺の余裕、お前が全部壊していく」
「はあ?」
「ねーんだよ、余裕。在庫切れ。いっつもいっつも、お前は俺のペースをどんどんどんどん崩していきやがって。あーマジムカつく」
散々文句を吐き出した頃にはボタンは全て外れ、それもまたテーブルの辺りに放られた。
言葉の意味はよく読み取れないが、怒った口調にアリスは引き続き涙を流し続けていた。
一糸纏わぬ無防備な姿で、いつものように強く言い返すこともできない。
彼の顔が、30センチほどの距離まで戻ってきた。
「そんな風に言わないでよ……。あたし、何にも壊してないもん」
「泣くなよ。ほら、また壊したぞ。俺の余裕」
「何なのよ、もう。ワケわかんない。あたしこそマジムカつくっ……」
アリスは彼を押し返そうと、腕を彼の肩に掛けて押し返そうとした。
しかし、あえなく手首を掴まれ失敗に終わる。