アリスとウサギ

「わかれよ。読み取れよ」

「こんな状態で頭なんて働かない」

「あー、もう! だから、俺……。はぁ……」

 ハスキーボイスは、搾り出すようなトーンで色気を増した。

 彼のネックレスがアリスの胸元に垂れる。

 やっぱり大事な部分を言わないウサギの顔は、もう10センチという距離まで近づいていた。

 何だか悔しくて、涙目のままキッと彼を睨んでやった。

「何よ。続きを言いなさいよ」

 ウサギはアリスの手首を放して再び親指で涙を拭い、顔を更に5センチ近づけて止まった。

 細められた大きな目に、ゾクゾクする。

 鼻をくすぐるサムライの香りに、ゾクゾクする。

 ネックレスが胸上をコロコロ動く感覚に、ゾクゾクする。 

「俺、奈々子のことが好きみたい。……困ったことに」

 アリスの目に、再び涙。

「一言余計……っ」



 狭いシングルベッドの上で、二人。





 
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