アリスとウサギ

 そして20分後には、

「お世話になりました」

 と、頭を下げて事務所を出た。

 結局アリスは二人に負けてしまったことになる。

 ウサギを奪われたわけではないが、彼への執着心の強さは自分以上。

 二人に呪縛されているような気さえした。

 求人情報誌を買い、自分の部屋に帰宅。

 一人になると、弱い。

 アリスは一人静かに泣いた。

 そして、気を晴らしたい時の救世主にすがりつく。

「はぁ? 何それ。信じらんない!」

 早苗は袋いっぱいに酒とつまみを買い込み、アリスの部屋までやってきた。

 イチゴのチューハイを飲みながらチーたらをかじる姿が滑稽だ。

 その組み合わせはアリス的に、無し。

「全てはあんな男にひっかかったあたしが悪いの」

「それもそうね……って、ウサギは何やってんのよ?」

「仕事じゃないっすかね」

 早苗はアリスの代わりにめいっぱい文句を言ってくれた。

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