アリスとウサギ
彼女のイチゴチューハイが空になった頃、アリスの携帯が鳴り出した。
ウサギからメールだ。
〈今日はどっちにいんの?〉
どっちとはウサギの部屋かアリスの部屋かという意味である。
〈自分のとこ。友達が来てるの〉
と返信。
最近ではウサギの部屋にアリスの私物も増えた。
狭いアリスの部屋にはウサギの私物はほとんどないが、強い要望により灰皿が設置された。
コンロ上の換気扇下に。
二人の関係は良好だが、アリスを取り巻く環境は一部見事に崩壊してしまった。
宇佐木啓介という男をそばに置く代償は、精神的にかなりデカい。
覚悟をしているつもりではあったが、予想以上に大きかった。
〈そっか。じゃあ今日はそっちに帰る〉
「はぁ、バカウサギ」
アリスの呟きを聞きながら、早苗はピーチのカクテル缶を開封。
「アリスってさ、強いよね」
今度はポテチをかじりながら笑った。
その組み合わせなら、有りだ。