アリスとウサギ

「じゃ、頑張ってね」

 という言葉を残し、早苗は終バスの時間に帰って行った。

 空き缶などの片付けを済ませ、久々に風呂を溜めてゆっくりと浸かる。

 ……つもりだったが、酒が回ったため早々に切り上げて早めに横になった。



 ガチャというドアの音で目を覚ます。

 ウサギのお帰りだ。

「おかえり……」

「おう」

 眠い目をこすって起き上がると、彼はいつもにも増して飲んでいるようだった。

 時刻を見ると午前5時。

 今日は忙しかったのだろうか。

 ウサギはすぐにポイポイ服を脱ぎだした。

「うわっ。超酒臭いよ」

「超飲んだもん」

 倒れるように寝転がったウサギからは、サムライに混じって女物の香水の匂いがした。

 キャバクラで働いている彼には珍しいことではないが、嗅ぎ覚えのあるその香りに鳥肌が立つ。


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