アリスとウサギ

 アリスにピキーンと緊張が走る。

 それでもなるべく笑顔を作って、

「辞めちゃった」

 と言ってみた。

 理由を聞かれたらどうしよう。

 俺に相談くらいしろ、なんて言われても言い訳できないし。

 アリスはウサギの顔色をうかがう。

 しかしウサギはダルそうな顔のまま、

「そうか。ま、いいんじゃね?」

 と言って味噌汁のワカメを口に入れた。

 こんなにあっさり……。

 緊張したのがバカみたい。

 アリスはホッとする反面肩透かしを食らった気分になった。

「つーかバイトなんかしなくたって、俺が小遣いくらい出すけど」

 簡単に言ってのけたウサギ。

 アリスは箸を落としそうになった。

「は? 変なこと言わないでよ。親じゃないんだから」

 確かに彼は仕事をしているが、アリスはウサギを学友として見ている。

 小遣いなんて……。

「いくら必要? 10万あれば足りる?」

 アリスは味噌汁を噴き出した。

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