アリスとウサギ
「そういえばさ」
洗い物が終わった頃、ベッドで酔いに耐えるウサギが突然話を切りだしてきた。
手を拭きながら振り返ると、彼はうつ伏せで目を閉じていた。
「誰に聞いたの? ホストとか」
「自分で答え出してたじゃない」
「やっぱり直人か」
うっすら開いた目はどこか憂いを帯びている。
「まぁ、そんなとこ」
軽く舌打ちをして寝返りを打つと、背中がいつもより小さく見えた。
「隠すことないじゃないの。今更驚かないよ」
「人の口から伝わるのが嫌なんだって」
「じゃあ、今教えて。ウサギのこと、もっと知りたい」
そう言うと、ウサギの体が再びこちらを向いた。
目はうつろなまま。
へたれている顔すらキレイだという憎たらしさ。
「いいね、そのセリフ」
ふと笑い、微かに動いたのと同時にピアスが光を反射した。