アリスとウサギ
9.そして名前が
アリスが目覚めると、年内の講義と店の営業を終えたウサギは、精魂尽きたような顔をしてダブルベッドにうつぶせて眠っていた。
冬だというのに、上半身は裸だ。
背中の刺青が見えていたので掛け布団をそっとかけてやると、パチッと大きい目が開いた。
「ごめん、起こした?」
アリスが焦って謝ると、ウサギは思ったよりハッキリした口調で話す。
「いや、変な夢見てた」
「どんな夢?」
「直人と荒木さんに、胴上げされてんの」
「直人さんと、早苗? 何よその組み合わせ」
「しかも二人の力で10メートルくらい上げられててさ、落ちたところで目が覚めた」
「あはは、何それ」
ウサギはごろっと寝返りを打って、アリスにぐっと近づく。