アリスとウサギ
しばらく経って時間が来るとおじいちゃん教授が入ってきた。
ゼミ部屋は一気に静まり返る。
これから彼らとどんな関係になっていけるだろう。
アリスはそういう期待で胸を膨らませていた。
「じゃあ学籍番号順に自己紹介をしてもらいますね」
おじいちゃん教授こと井上教授の指示により、学籍番号が早いアリスは一番初めに自己紹介をすることになった。
「では、有栖川さんから」
「はい」
返事をして、立ち上がった瞬間。
バン!
勢い良くドアが開き、全員の視線がそこに集中する。
「遅れてすみません」
セリフの割には落ち着いた声。
その主に、アリスは自分の目を疑った。
息を切らしながら空席に座ったのは、かつて淡く焦がれたウサギだったのだ。