アリスとウサギ
井上教授は人数を数えて、
「揃ったみたいだねぇ。それじゃ、改めてどうぞ」
穏やかな笑みでアリスを促した。
ウサギの出現で一気に緊張が増したアリスは、震えそうになる唇を一旦キュッと結んで控えめに発した。
「有栖川奈々子です。よろしくお願いします」
自己紹介は教授によって機械的に進められる。
「次、宇佐木君」
学籍番号の近い彼は、アリスの次。
かつて英語の講義で聞いたのと同じトーンで「はい」と言い、立ち上がった。
「宇佐木啓介です。遅れてすみませんでした」
ボサボサだった髪はひとつに束ねられ、無精髭は顎だけに整えられている。
モサかったのは一変して、ワイルドになっていた。
髪が束ねられて顔がよく見えるが、予想以上にキレイな顔をしている。
二重まぶたの大きな目。
通った鼻。
薄い唇の大きな口。