アリスとウサギ

 アリスはガン見したい気持ちを抑えてチラ見にとどめ、彼を観察した。

 この顔なら、女も騙されて納得だ。

 一時的な淡い気持ちを思い出してしまったアリスは焦る。

 納得してはいけない。

 私は騙されるわけにはいかないんだ……と。



 この日の初ゼミは自己紹介と、今後の方針の説明のみで解散になった。

 教授が部屋を去ってからは、必然的にこのような話になる。

「飲み行こうぜ!」

 これからよろしくコンパだ。

 バイトなどの予定がないメンバーは、この後安さが売りの居酒屋に集まることになった。

 この日はバイトのないアリスも参加する。

 気になったのは、ウサギ。

「ウサギ、お前も来るだろ?」

「あー、時間までなら」

「今日も仕事?」

「まあな」

 騙されないと心に誓ったものの、気になるものは気になる。

 アリスは心の中で、小さくガッツポーズをした。

< 9 / 333 >

この作品をシェア

pagetop