あなたが好きなはずなのに
「昨日は・・・。」


隆志は少し考えたあとゆっくりとした口調で答えた。


「都子を送って、母さんの所に泊まったよ。終電に間に合わなかったからな。」


私は分かっていたのに、“都子”という言葉を聞くと胸がズキンと痛くなる。



私だって、リョウとずっと一緒にいたのに。


いや・・・“だって”と言う言葉はおかしい。


隆志は都子さんを、“送っただけ”なのだから。



しかし、自分の事は棚に上げて隆志に質問を続ける。


「都子さんは、すぐに隆志を解放してくれた?」


隆志を信じているはずなのに、不安でしょうがない。


これって、信じていないって事なの・・・かな。


自分で自分がよく分からない。



「いや・・・。」


言いにくそうに答える隆志。


そうだよね。


都子さんが素直に隆志を帰すはずがない。



「じゃあ、どうしたの?」


「何だか取調べをされているみたいだな。」



< 103 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop