あなたが好きなはずなのに
別に悪い事したわけじゃないよね?


なら、ちゃんと隆志に言ったほうがいい?



しかし私は“あの事”が頭をよぎった。


帰りにリョウと手が触れたこと・・・。


もしかして、手を繋いだ事は、そんなに問題ではないのかもしれない。


それより、それに対して・・・リョウに対してドキドキしてしまった事への罪悪感。


その方が大きいのかもしれない。



そして結局・・・私は少し卑怯な答え方をした。


「えっと、気分転換に付き合ってもらっただけ。」


「気分転換?」


「ちょっと昨日の夜沈んじゃったから。リョウがそれを心配してくれて・・・。」



すると、隆志は一言「ごめん」と申し訳なさそうな声で言った。


そして隆志は、それ以上私に聞くことは無かった。



私ってば、いつからこんなにずるい女になったのだろう。


昨日の事、今日の朝の事。


悪い事はしてないと分かっているのに、どこか少し後ろめたい気持ちがあって。


聞かれたくなかったから、わざと昨日の事を持ち出した。


昨日の事を持ち出せば、隆志は自分のせいだとそれ以上聞かないと分かっていたから。



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