あなたが好きなはずなのに
私は彼女の一瞬だけれど、淋しそうな横顔を見逃さなかった。


彼女はきっとリョウの事を好きなのだろう。



「花音は彼女じゃないよ。兄さんの彼女。」


その言葉を言った後に、ふぅっと溜息をつきながら笑うリョウ。


そんな溜息なんかつかないでよ。


彼女もその言葉を聞いてニコッと微笑むし。


はぁ・・・。


なんとなく、ここで逢ったのが失敗に思えるよ。



「いいよ、まだ少しウィンドウショッピングしたいし。リョウは先に帰っていて?」



“一緒に帰ろう”“先に帰っていて”この言葉じゃ、まるで一緒に住んでいるみたい?


「あっ、あの・・・リョウと私はお隣同士なんですよ。」


私は言い訳かのように彼女に説明する。



「へぇ、お隣同士ですか。」


「はい、だから心配しないで下さい。」


私ったら何を言っているのだろう。


何の心配なんだか・・・。


すると、私の言葉に彼女は少し顔を赤らめる。


「いや、私はそんなんじゃなく、山下さんとは仕事仲間なだけですから。」



< 110 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop