あなたが好きなはずなのに
「あの晩、隆志ったら『俺と花音の邪魔をしないでくれ』なんて私に頭を下げてきたのよ。あのプライドが高い隆志がよ?」


都子さんは呆れた顔で笑いながら話す。


でも、どこかすがすがしい、そんな笑顔にも思えた。



「でね?私・・・『今度の私の誕生日に一緒にいてくれたらあなたの事諦めてあげる』って言ったの。もちろん、それは口実。ただ、隆志と一緒にいれれば良いとその時は思ったの。諦める気はさらさらなかったわ。」


都子さんは思い出すかの様に話を続ける。



「でもね、聞いてよ!それが昨日だったの!隆志ったら、一緒に歩いている途中でジュエリーショップの前で立ち止まって。もう、私に誕生日プレゼントでもくれるのかと思って喜んだわ。そしたら、隆志・・・私になんて言ったと思う?」


私は分からず首を傾げ、リョウの方を向くと、リョウも私に分からないと首を振っていた。


私は恐る恐る都子さんに続きを聞こうと問いかける。


「それで・・・どうしたんですか?」


すると、都子さんはフフッ優しい笑顔になり・・・



「『花音へ贈る指輪はどんなのがいいかな・・・?』だって!もう、やんなっちゃうと思わない?他の女といるときによ!私ったら、もう呆れちゃったわ。」



私は呆気にとられて、何回も瞬きをしてしまった。


隆志・・・そんな事思ってくれていたの?


「だから、夕飯奢らせてやったわよ!もう、むかつくったらありゃしない!」


都子さんは怒っているようで、怒ってはいなかった。




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