セツナイロ
「…ハルキ…なのか……?」
俺は何も答えない。
「お前、何でここに…?」
アスカの声が低く響いた。
「……アスカは………
アスカは身勝手だな…。」
「…は?」
アスカの声は震えていた。
「本当に好きな奴って、ユズなんだろ…?」
俺は悲しみを隠すために笑顔を作った。
「…あぁ………」
しばらくして小さく聞こえたアスカの声に無性に腹がたった。
俺は立ち上がり、アスカの襟元を掴みながら言った。
「お前…今ユズがどんな気持ちか知ってんのかよ!?
ルナだって…お前の事心配して……
なのに本当に好きな奴がユズっておかしいと思わねぇのかよ!
好きとか嫌いとか言う前に、俺たち友達じゃなかったのかよ!
親友じゃなかったのかよ…!」
俺はうつむき、思いっきり床を蹴った。
固く閉じた瞼から溢れた涙が、俺の頬を伝い、こぼれた。
それから俺は手を離し、後ろを向いた。
「もう…お前とは友達でいらんねぇ……
ユズにもルナにも、関わんじゃねぇぞ…。」
そしてアスカを残し、階段を駆け下りた。
微かに甘い匂いがしたのは、きっと気のせいだろう。