セツナイロ



「ユズ

本当に何もないのか?」


眼鏡の奥の瞳があたしの心まで見透かすような気がして、あたしは少しだけ視線をずらした。

「だから何もないって。
心配しすぎ。」

「でも…」

「おまたせいたしました。
ショートケーキとコーヒーになります。」

その時ちょうどやってきたケーキ。


「わぁ!
美味しそう!

いっただっきまーす。」



ユウくんが何か言いかけていたのを阻止し、あたしは甘ったるいケーキを頬張った。




「なぁユズ…」

「んーほんっとに美味しいー

ユウくん食べないの?」

「あ、あぁ…
食べるよ。」



それだけ言うとどこか不安気な表情でケーキを口に運んだ。




あたしはケーキを口の中いっぱいに詰め込んで、コーヒーをがぶ飲みし、ケーキを胃に流し込んだ。




その後会話はなく、気付いた時にはケーキ屋を出て、家に着いたところだった。




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