セツナイロ



すぅーと勢いよく空気を肺に送り込んだ。



すぐさまあたしの心臓はドクンドクンと、体中に酸素を送り出した。




こうすると気分がスカっとする。


まるであたしも風になって空を飛んでるみたい。




鳥になりたい。


小さい頃を思い出した。


あたしの幼い頃の夢は鳥になる事。



鳥になって、どこまでも続く広い空の下を、滑るように飛ぶ鳥になりたかった。



うちわを両手にもってテーブルの上から飛び降りた事もあった。


でも人間が“うちわ”なんてもので飛べる筈もなく、ただ床に落ちて膝を少しすりむいただけだった。




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