セツナイロ


また天井へと視線を戻したあたしに、ルナが近付いて来た。



「ねぇ、どこ行ってたの?

朝にどっか行っちゃうから授業遅れるんじゃない。」


そう言って深いため息を1つこぼした。



「別に…どこにも行ってないよ。

ただ、廊下歩いてただけ…。」


本当は嘘。


でも屋上に行ける事をルナは知らない。

例え親友であろうとも、屋上への行き方なんて教えられない。



だって、そうお姉ちゃんが言ったんだ…。



「…そう…ユズいっつも教えてくれないよね?

…私には教えられない事なの…?」


どこか寂しげな表情にあたしは何も言えなかった。



「午後の授業はちゃんと出てよね?

じゃないとまた怒られるよっ!」

そう言ってクスクス笑うルナ。


きっと何か思ってる。


あたしが教えない事に対して怒ってる。



怒ってる筈なのに…




ルナの悲しそうな笑顔に、あたしの心臓が締め付けられて、苦しかった。


“ごめんね”



心の中で囁いた。




< 29 / 203 >

この作品をシェア

pagetop