セツナイロ



あたしは何故か怖くなって、夢我夢中で走った。


時折、乾いた唇を舌で軽く舐めて、潤いを補給した。



やがて息も苦しくなって、足の感覚も薄れて、走る事が嫌になった。




だけど何故か、ここで諦めてはいけない気がしたんだ。



しかし、その足はケータイの着信音に、意外にもあっさり動きを止めた。



「ハァッ…ハァッ……」


肺が酸素を求めている。


視界もぼやけてきた。



そう言えば熱あったんだっけ…


今更ながら気付く。



…ケータイ…!


あたしは未だに鳴り止まないケータイをポケットから取り出し、震える指で通話ボタンを押した。



誰からの電話かなんて見ている暇がない。



あたしはケータイから聞こえた「もしもし」に対して、かすれた声で「助けて」を返した。



…ここで意識を飛ばしちゃいけない……


あたしは近くの塀にもたれた。



ケータイからまだ声が聞こえる。



でもあたしは荒い息を制御するのに必死だった。


そのため電話の声に反応出来る訳もなく、電話が切れるのをただ待った。



…こんな事なら、誰かと帰るんだった……



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