セツナイロ


「ユズ…!

ユズ!!」

ハルキ?


ハルキだよね?



「…遅いよ……」

聞こえたのかは分からない。


あたしの荒い息遣い。

その中で発した、かすれた小さな声。



うっすら瞼を上げれば、汗を額に滲ませて、制服姿のハルキがケータイを耳に押し当てているのが見えた。



「…ありがと………」

聞こえたかな?


その時、ハルキが微かに微笑んだような気がした。



< 63 / 203 >

この作品をシェア

pagetop