セツナイロ
あたしの家は母子家庭。
あたしがまだ小さい頃に父は女を作って逃げたらしい。
あたしには父親の記憶がない。
あたしはずっとママとお姉ちゃんと3人だけなのだと思っていた。
授業参観とか、親子行事とか、父親が来てる人も居たけど、羨ましいと思った事なんて全くない。
友達に「お父さん居なくて寂しいよね、ユズちゃんは」なんて言われた事もあったけど、寂しいなんて思った事なんてこれっぽっちもなかった。
あたしはママが居るだけで充分満足していたし、
父親は元から居なかったのだと自分にいつも言っていた。
父親が居ない分、ママは1人で毎日朝早くから夜遅くまで働いている。
あたしはそんなママに迷惑をかけまいと生きてきた。
なのに…
今日ので相当迷惑を掛けただろう。
こんな事なら、屋上になんて行かなければ良かったんだ。