Rainbow Love Story [短編集]
「―っ…っく…」
気付けば、涙が出ていた。
「え〜?泣かないで?」
と、床から立ち上がった海谷さんが言う。
「…っ最低ですっ!」
考えれば考えるほど、涙が出てきた。
初めて…だったのに。
いずれにしろ、香夜さんとは無理だって、わかっているけど…。
せめて、好きになった人としたかった。
「でもさ、政略結婚なんて、そんなものでしょ?必ずしも、好きな人と結婚出来るわけじゃない。
あなただって、身近に居たじゃないか。」
「…っ…?」
「はぁ。わからないの?東條香夜だよ。
そいつにとってのあなたは、言ってみれば僕みたいな存在だったってわけ。そうでしょ?」
え…?
何かが、心に突き刺さった。
香夜さんにとっての…私?
香夜さんは私を好きじゃなくて。
触れることも、キスも…したくないような「そういう風には見れない」相手で。
なのに、「政略結婚」だからって、私は…。
私はこの人と同じようなことを…やっていたということ…?