Rainbow Love Story [短編集]
急に、この間の私の言葉が蘇る。
『どうして私には
キスしてくれないの?』
恥ずかしくて、顔が赤くなるのが分かる。
…私は、なんてことを聞いていたんだろう。
今なら香夜さんの気持ちが、痛いほどよくわかる。
どこまで馬鹿なの、私は。
「わかってもらえた?この世界は、純愛じゃいかないよね〜」
ははは、と近付いてくる海谷さんに、もう、抵抗することが出来ない。
この人みたいになる前に、離れられてよかったのかも。
「東條なんて、忘れさせてあげるから…」
拒否する権利なんて、ないのはわかっているけど、近付く顔を見ていられなくて。
涙が頬を伝って、私は静かに瞼を閉じた。
バンッ━━━━━━━…
その時、大きい音がして、思わずドアを見ると…
「未緒っ…!」
え…?
「…っ、こうやさ…?」
気付いたときには、香夜さんは海谷さんから私を引き寄せていて。
「すみません、海谷さん。
このお話は、なかったということで」
笑顔でそれだけ言うと、私の手を引いて走り出した。