Rainbow Love Story [短編集]
「…はい。」
そう声を掛けられて、上を見上げると、差し出されている手のひら。
「ごめんね?…立てる?」
そう言ってにこっと微笑むその顔は、思わず見とれちゃうほどの美しさで、普通の人とは放つオーラが違ってて…。
私の中の何かが反応するのがわかる。
「ぁ…!」
…思い出したかもっ
「大丈夫?…」
この人…
もしかして…
よく噂で耳にする…!
「―水城 紫音[みずきしおん]先輩っ!?」
差し出された手を取ることもなく、すくっと立ち上がり、指をさしてそう言っていた。
「―?そうだけど?」
その人は、少し首を傾げながら答える。
「俺と話してたやつが、ぶつかったんだよね?
ま、怪我がないならいいや。じゃあ…」
そう言って立ち去ろうとする水城先輩の腕を、私はがしっと掴んだ。