夜桜☆ヘブン
未だにこの組織の仕組みが分かってない俺は一人取り残された感を抱いていた。

「大丈夫よ、私もマリア総監には会ったことないから」

冥は俺のこと気遣ってくれているらしい。こっそり耳打ちをしてくれた。



「開けるぞ」



カチャ……



鍵穴から響く音に俺たちの心臓の鼓動も一気に高まった。

それは、

扉を開けた先に見えるものに対する期待感と、不安感。

俺の場合は不安感の方が大きいと言うことはこの場で断言しておこう。



キィィィ----------



古びた木造の扉をゆっくりと開ける。



「暗くて何も見えねぇな」

ドアを開けた隊長の後ろに俺たち三人が並ぶ。

「隊長の頭んとこになんかスイッチみたいのありますけど」

冥が最初に気づいた。

「どれっ」



パチッ



それはやはり電気のスイッチだったらしく、部屋の中を明るく照らしてくれた。

「なんだ?この白い粉」

俺は靴底に付いた粉の上をじたばたと歩いた。
床には白い粉が至るところに散らばっている。

「まだ粉の状態も新しいな。数時間前までここに保管されていたのは間違いない」

永倉さんの言葉に皆が凍りつく。

「これは──『麻薬』だ」

隊長は床に付着している粉をそっと右手の指先に乗せた。

「でも取り引きは明日なのに、なんでわざわざ動かしたりしたのかしら?」

冥の言う通りだ。ここで取り引きが行われるなら、わざわざ移動させることははない。しかも床に麻薬が散乱しているのは、誰かが意図的にまいたとしか考えられない。

「何か嫌な予感がする──詳しく調べてみる必要はあるな」

もはや隊長に異論を唱える者はいなかった。
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