【長編】好きって言って



「悪いけど帰って?」




首を傾げながら、そう耀が呟くと女の人はあたしをキッと睨んで、下唇を噛んで去って行った。




その後ろ姿を見送った後。



耀はあたしの方に振り返って、ニコッと微笑んだ。




「ごめんね。芽衣。嫌な気分にさせちゃったね」




優しい声で呟いて、耀の細い手があたしの頭を撫でた。




ドキッ。




少し頬を赤く染めながら、あたしは耀を見上げて微笑んだ。




「ううん。平気だよ」




女の人じゃなくて、あたしを庇ってくれたから……。



それが一番嬉しかった。




だって、“大切な”って言ってくれたんだもん。




「あたしこそ……。ごめんなさい」




< 10 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop