【長編】好きって言って
「悪いけど帰って?」
首を傾げながら、そう耀が呟くと女の人はあたしをキッと睨んで、下唇を噛んで去って行った。
その後ろ姿を見送った後。
耀はあたしの方に振り返って、ニコッと微笑んだ。
「ごめんね。芽衣。嫌な気分にさせちゃったね」
優しい声で呟いて、耀の細い手があたしの頭を撫でた。
ドキッ。
少し頬を赤く染めながら、あたしは耀を見上げて微笑んだ。
「ううん。平気だよ」
女の人じゃなくて、あたしを庇ってくれたから……。
それが一番嬉しかった。
だって、“大切な”って言ってくれたんだもん。
「あたしこそ……。ごめんなさい」