【長編】好きって言って
走ったからっていう理由もあるけど、それ以上に緊張してる。
ドアノブに力を入れた時……。
「何……そこで葛藤してるの?」
その声を聞いて、またあたしの目から涙が溢れてくるのが分かった。
その優しい低くて、甘い声。
あたしの大好きな声だった。
あたしは流れる涙に構わず、ゆっくりと後ろを振り返った。
「……耀」
あたしを見つめて優しく微笑む耀が、立っていた。
「勝手に……ドア開けようとしちゃ駄目でしょ?」
そう言って耀は、優しく笑った。
何だかホッとした。
耀が前みたいな目であたしを見たら、どうしようって。
少し不安だったから。