【長編】好きって言って
「ほら。……気晴らしにカラオケでも行くぞ」
そう言ってオレに手を差し出す優雅。
いつもは馬鹿で無駄に声のでかいうるさい奴だったけど。
そんな奴に気付かされたオレは、もっと馬鹿なのかもな。
そう思うと、笑みが零れた。
「……優雅」
オレが名前を呼ぶと、優雅は首を傾げた。
「ん?」
“ありがとう”……。
そう口を開いて言いそうになったけど、オレはフッと笑って差し出された優雅の手を握った。
「いや……何でもない」
その手を支えに立ち上がると、オレはゆっくりと歩き出した。