【長編】好きって言って
そんな複雑な心境だからか。
俺はなかなか言葉を表現する事ができない。
俺は輝になんて言う事が適切なんだろう。
考えても分からない俺は無言のまま俯いた。
すると輝がそんな重い沈黙を破った。
「悪いけど……そんな落ち込まないでくんない?」
「え?」
今、何て??
キョトンとしながら輝を見上げると、不機嫌な顔で俺を見下ろしている。
「やっと自分で1人の女に絞れたんだよ?だったらいいじゃん」
「輝……」
「オレが好きだった女が兄貴を選んだんだ……。自信持てよ」
“好きだった”って過去形の言い方が少し俺の胸を締め付けた。