【長編】好きって言って
「だからオレは、オレのままでいいって思えた」
「え?」
「俺が憧れてた兄貴が普通の人間だって分かったから。近い存在だって思えたから」
普通の人間。
近い存在。
その言葉がどんなに嬉しい言葉か。
俺は今まで、みんなが勝手に作った俺に答えようと必死だったから。
そのせいで自分を汚してしまった。
でもそんな俺の本当の姿を分かってくれたから。
すごく嬉しくて、心が軽くなった。
「ありがとな、輝」
そう言って微笑むと、輝は無表情で口を開いた。