【長編】好きって言って
「輝に……何が分かるんだよ」
弱々しい声で兄貴は呟いた。
「汚れた俺の気持ちなんて……お前が分かる筈ないだろ」
そう言って兄貴は俯いた。
「分かんねえよ。兄貴の気持ちなんて……」
好きでもない女を抱く奴の気持ちなんて。
想ってくれてる人の気持ちを踏みにじる奴の気持ちなんて……。
「でも好きな奴を想う奴の気持ちは分かる」
オレも芽衣が好きだから。
芽衣が兄貴を想う気持ちは分かる。
「だから……オレは芽衣の辛さも苦しさも分かる」
オレは真っ直ぐ兄貴を見つめた。
「兄貴が芽衣を受け止められないなら、オレが芽衣を受け止める」