大好き後藤君☆
桃田さんは動かない。
目を見開いたまま動かない。

後藤君は喋らない。
止めようともしない。

私が桃田さんを殺すのを、認めてくれるの?
もし認めてくれなくても、私は殺す。
殺す。

半分だけ、腕を落ち上げてみた。
放課後の夕日でナイフがきらっと光る。
桃田さんは、はっと息をのみ一歩後ろに下がった。
「今更逃げるつもり?」
私は逃げられないように、桃田さんの腕に自分の腕をからめた。
すぐ近くに桃田さんの喉がある。
私は迷わずナイフを桃田さんの首につけた。
桃田さんは動かない。
やがて皮膚はぷくりと裂け、ナイフが喉に流れ込む感触がする。
ずぶずぶと、ゆっくり、刺す。
的確に喉を突く。
止めどなく真っ赤な血が溢れだして、桃田さんの制服を汚した。
私の腕にも、血がしたたりおちてくる。
制服の袖が汚れる。
気にならない。
やがてナイフは底を尽きた。
まっすぐに首にナイフが刺さった桃田さん。

もう・・・意識はないのかな?
からめていた腕をほどき
静かにそこに寝かせる。
ナイフは突き刺さったままだ。

私が静かにほほえんで、後藤君をまっすぐ見つめると
後藤君の頬には濡れた後があった。
「どうして泣いているの・・・?」
私は悲しかった。
桃田さんのために泣いているの?
どうして?止めもしなかったくせに。


でも、それでも後藤君が大好き。

これで桃田さんはいなくなった。
私は後藤君の唯一の人。
後藤君は私の唯一の人。


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