幸せのカケラ
眉間に皺寄せ、祈り始めた僕。


桃太郎が、膝の上で丸くなりながら、硝子玉みたいな瞳で僕を見つめてる。




あまり見ないで欲しいなぁ。

気が散る。









「ただ今ぁ」



…………嘘。


君が帰って来てしまった。







大きなエコバッグを二つも両手に下げた君が、リビングに姿を現した。


桃太郎が、僕の膝からのっそりと起き上がり、君の足元に身体を擦り寄せに行った。






「なぁに桃太郎、ちゃんとあなたの猫缶も買って来たわよ」




桃太郎の……。




「何を買って来たの?」


バッグをダイニングテーブルへと置いた君に、桃太郎さながらに擦り寄る僕。




送った念は少ない。

でも、少なからず期待は込み上げてきていた。





「何って、食料品よ?」

「それは分かるけど」

「刺身は無いわよ」

「……刺身はいらないよ」

「桃太郎の猫缶も、いつもと同じ。高級品では無いわよ」

「桃太郎も、いらないと思うよ」



多分。





バッグの端に指掛け、さりげなく中を覗いてみた。





……………。





大福。


ある訳、ないよね……。


.
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