幸せのカケラ
――――バタン。


テーブルに顔を伏せ、溜め息を吐き出す僕の耳に、玄関のドアが閉まる音。


顔を上げると、リビングに入って来る君が見えた。



あれ?





壁に掛けてある、アンティークの振り子時計に視線を移した。

結婚のお祝いに、君の親友達がプレゼントしてくれたもの。




午後4時10分。


「早いんじゃない?」


君が出てから、20分くらいしか過ぎていない。

隣町まで行ったんじゃなかったの?




「車の中に、お醤油が置き忘れてあったのよ。運転中にバッグが倒れたから、きっとその時にこぼれたんだわ」



肩をすくめて笑う君の腕に抱えられた、お醤油のボトル。



「ああ、そうだったんだ?良かったね」



車中で、20分も探していたの?




「それよりも、どうして買い物してきた物がテーブルに散らかっているの?」

「ああ…暇だったから」



並べてた。




あなたのイタズラは桃太郎並ねと言いながら、君はお醤油と、淡い紅色の包装紙に包まれた小さな荷物をテーブルの隅に置く。





「あっ」



その紅色の包装紙は……。




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