幸せのカケラ
僕の瞳が輝いたのに気付いていたのか。

君は、ちょっと得意げな表情に笑みを乗せた。




「食べたかったんでしょう?桜屋の大福」

「どうして分かったの?!」

僕のテレパシーが届いたの?




「そりゃあ、分かるわよ」



君は笑いながら、桜屋の包装紙を丁寧にほどいている。


「なんてね。実は、急に思い出したのよ」

「何を?」

「これ」



言いながら、君は自分の耳たぶを指で軽くつまんだ。




「昔、私がピアスを空けようとしたら、あなた止めたじゃない?君の耳たぶは、僕の好物に似てるから止めて欲しい、なんて言って」

「………大福」

「そう」





笑う君。


笑いながら、和紙に包まれた大福を、僕に手渡してくれる君。




覚えていたんだな、君も。








ダイニングテーブル。

君と向かい合い、大福を頬張る。




柔らかい。

柔らかくて、ほのかに温かい。


君の耳たぶみたいな。




ううん、少し違う。


これはきっと、君の手の温もりなのかもしれない。





君の隣では、桃太郎が珍しそうに、包装紙のニオイを嗅いでいる。





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