幸せのカケラ
少し混雑した改札口を抜け、君が待つ西口へと歩を進めかけた。


途端、ふいと後ろから、コートを引かれる感覚。




「お帰りなさい」





驚いた。






「待ち合わせ、西口だよね?」

「うん、そう。私が待ちきれなくて来ちゃっただけ」




去年、クリスマスにプレゼントした白いコートを着て、明るい栗色の長い髪を綺麗に巻いた君は、瞳を細めて笑う。





たくさんの人が入り交じる駅の中。


一際眩しく感じるのは、僕の欲目だろうか。





「混んでいるから、西口で待てば良かったのに。僕を見つけられなかったらどうするの?」


本当は、少し嬉しい。

けれど照れ臭さが先走り、それを隠してしまうのが僕の悪い癖なんだ。




「大丈夫よ、あなた背が高いから目立つもの。それに私、どんな人混みでも見つける自信があるの」



自信があるんだ?

いつも思うけれど、君の根拠の無い自信はどこからきているのだろう。


でもなぜか、君が大丈夫と言うと、本当にそう思えるから不思議だ。




以前、僕が仕事で失敗して落ち込んだ時もそうだった。


大丈夫だって、君は言ったっけ。




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