幸せのカケラ
照れ臭そうにうつむいた君。

その瞳が、僕を捕らえる。



「“僕は、幸せにするとは約束できないかもしれない。なぜなら、君と僕の幸せは、同じ感覚では無いかもしれない。けれど、君が側にいてくれれば僕は幸せだから、君と一緒にいたいんだ”」

「……あ」



君の語る言葉に、顔に熱が込み上げてくるのを感じた。



ちょっと……それは…。




「あなたのプロポーズだったわよね」

「…………」



そう。

僕は君に、そう言った。


考えて考えて、けれど格好良い言葉が浮かばなくて。

結局、自分の気持ちに素直に言うしか無かった。






「……意地悪だな」


今、それを言う?



「どうして?」

「だって、格好悪いじゃないか」




幸せにする、とは言えなかったんだぞ?




「格好良かったわよ。取り繕ったお決まりなプロポーズじゃなくて、私は嬉しかったし、感動したもの」

「……そうなの?」

「口下手なあなたの、飾らない言葉だと思った」



君は、そう受け止めてくれていたのか。




「それに幸せなのは、あなただけじゃないわ。私も幸せだもの。私達、同じ幸せの感覚だったのよ」


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