ハツコイ☆血肉色
「飲みものでも出すよ。ワインでいいかな?」

「うん、ワイン大好き」


アルコールが入っていればなんでもいいのだ。


「赤でいい? マルゴーの八二年ものがあるんだ」

「ほんとに? 飲もう飲もう!」


マルゴーってなに? って感じだけど、きっと信じられないくらいおいしいに決まってる。


円城寺くんは、リビングのすみっこにあるカウンターキッチンの中に入っていった。


わたしはソファに腰を下ろすと、肩にぶら下げていたポーチをとなりに置き、ほっとひと息ついた。

なんとも言えない優越感。

わたしがいま座っているこの席は、熾烈な戦いをくぐり抜けて勝ち取ったものなのだ。


合コンという、むきだしの欲望がうずまく泥沼の戦いを。


今日きていた女の子たちのほとんどは、円城寺くんがお目当てだった。

そんななか、綿密な計画と周到な準備、そしてときには卑劣なこともやってのけて、ライバルたちを出しぬき、押しのけ、二次会のカラオケに向かう一行から彼とふたりで抜けだすことに成功した。

今さらながら、『虹川めぐみの合コン必勝テク~お持ち帰りされちゃえばいいじゃん!』を熟読しておいてよかったと思う。


とはいえ、わたしのルックスが一番の勝因だったことは間違いない。

今日あつまった男の子の半分くらいはわたしが本命だったようだし、あの場でベストカップルを選ぶとすれば、わたしと円城寺くん以外は考えられない。


思えば長い道のりだった。

ようやく今日、七年越しの夢がかなう。
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