ハツコイ☆血肉色
★8 円城寺
「逃げられないよ、もう」
慎重に距離を詰めながら、女の様子を窺った。
下着一枚、肩に下げたポーチ、凶器になるような物は持ちあわせていないが、断じて注意は怠らない。
女は僕を警戒しながらも、水槽の中身に気を取られているようで、ちらちらと視線を動かしている。
「この部屋に入った人間はお前が初めてだよ」
逃げ場を失った女は、壁際でうさぎのように震えている。
「円城寺くん……これって本物のおっぱい?」
「当たり前だろう。偽物を並べて何の意味があるんだ。ここは僕のコレクションルームさ」
実のところ、誰かに見せたくて仕方がなかった。
衆目に晒されることがコレクションの本質であり、これほどの“モノ”が誰に認められることなく埋もれ続けるというのは余りに忍びない。
だから今、こうして誰かの目に触れることに愉悦さえ覚えた。
たとえそれが、これから死にゆく者であっても。
「見てくれ、この乳房たちを。美しいと思わないか? 神が算出した奇跡の曲線、論理を超越した神秘の形質、至高のアートだよ。ホルマリン溶液の中で半永久的に生き続けるんだ」
女との距離はあと二メートル。
「生きてる女の子から切り取ったってこと……? あのバスルームで?」
「本当はそうしたいんだが、何かと面倒なことが多くてね。已むなく、殺してからオペすることにしてるよ。お前もその予定だったが、まんまと騙された。許さないよ」
そこで突然、眩暈のようなものを感じた。
慎重に距離を詰めながら、女の様子を窺った。
下着一枚、肩に下げたポーチ、凶器になるような物は持ちあわせていないが、断じて注意は怠らない。
女は僕を警戒しながらも、水槽の中身に気を取られているようで、ちらちらと視線を動かしている。
「この部屋に入った人間はお前が初めてだよ」
逃げ場を失った女は、壁際でうさぎのように震えている。
「円城寺くん……これって本物のおっぱい?」
「当たり前だろう。偽物を並べて何の意味があるんだ。ここは僕のコレクションルームさ」
実のところ、誰かに見せたくて仕方がなかった。
衆目に晒されることがコレクションの本質であり、これほどの“モノ”が誰に認められることなく埋もれ続けるというのは余りに忍びない。
だから今、こうして誰かの目に触れることに愉悦さえ覚えた。
たとえそれが、これから死にゆく者であっても。
「見てくれ、この乳房たちを。美しいと思わないか? 神が算出した奇跡の曲線、論理を超越した神秘の形質、至高のアートだよ。ホルマリン溶液の中で半永久的に生き続けるんだ」
女との距離はあと二メートル。
「生きてる女の子から切り取ったってこと……? あのバスルームで?」
「本当はそうしたいんだが、何かと面倒なことが多くてね。已むなく、殺してからオペすることにしてるよ。お前もその予定だったが、まんまと騙された。許さないよ」
そこで突然、眩暈のようなものを感じた。