ハツコイ☆血肉色
「BGMがないと寂しいよね」
円城寺くんはそう言って、キッチンから持ってきたボトルとワイングラスをテーブルに置くと、そのままステレオのところへ行った。
棚にびっしりと詰まったレコード盤を一枚一枚手に取り、吟味している様子。
「スヴェトラーノフなんてどう?」
すべとら……?
「うん、いいかも」
彼は宝ものを扱うような手つきでレコードをプレイヤーにセットして、そっと針を落とした。
ぶつりぶつり、という小さなノイズのあとに、オーケストラの演奏がはじまった。
クラシックなんてさっぱり理解できないけれど、きっと素晴らしく価値のある音楽なのだろう。
「じゃあ、あらためて乾杯ということで」
ワイングラスを軽く持ちあげて、円城寺くんはクールにほほえんだ。
白い歯がきらりと光る。
リアルでそんな光景を目にするのは初めてのことだった。
「ユリカちゃん、かなり強いよね。店でもけっこう飲んでたみたいだけど」
「え? あ、うん。お酒大好きだから! あはは」
一瞬、誰のことかと思ってしまう。
『ユリカ』と名乗っていたことをすっかり忘れていた。
合コンの顔あわせから、かれこれ三時間くらいたつけれど、円城寺くんがわたしの正体に気づいている様子はまったくない。
もっとも、気づくはずはないのだけれど。
今はまだ、『小松千世子』の名を明かすわけにはいかない。
円城寺くんはそう言って、キッチンから持ってきたボトルとワイングラスをテーブルに置くと、そのままステレオのところへ行った。
棚にびっしりと詰まったレコード盤を一枚一枚手に取り、吟味している様子。
「スヴェトラーノフなんてどう?」
すべとら……?
「うん、いいかも」
彼は宝ものを扱うような手つきでレコードをプレイヤーにセットして、そっと針を落とした。
ぶつりぶつり、という小さなノイズのあとに、オーケストラの演奏がはじまった。
クラシックなんてさっぱり理解できないけれど、きっと素晴らしく価値のある音楽なのだろう。
「じゃあ、あらためて乾杯ということで」
ワイングラスを軽く持ちあげて、円城寺くんはクールにほほえんだ。
白い歯がきらりと光る。
リアルでそんな光景を目にするのは初めてのことだった。
「ユリカちゃん、かなり強いよね。店でもけっこう飲んでたみたいだけど」
「え? あ、うん。お酒大好きだから! あはは」
一瞬、誰のことかと思ってしまう。
『ユリカ』と名乗っていたことをすっかり忘れていた。
合コンの顔あわせから、かれこれ三時間くらいたつけれど、円城寺くんがわたしの正体に気づいている様子はまったくない。
もっとも、気づくはずはないのだけれど。
今はまだ、『小松千世子』の名を明かすわけにはいかない。