ノブレス・オブリージュ
「お早う、ルーダーベ。やはり、今日だと思ってたよ」
目の前の蜂蜜色の髪をした青年は穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
先程、辿り着いたばかりの謁見の間には彼ともう1人。
今までの騎士よりも装飾が多く、明らかに地位の高そうな騎士が青年の傍らに控えている。
青年は、金を塗り固めた椅子に腰掛けている。しかし、けしてその豪勢な装飾に劣らないオーラが彼から出ている。
そう、この穏やかそうな青年がこのリグ国の国王である。
「……こんな朝早くの謁見、申し訳ありません」
ルーダーベは、彼から一段下がった場所で片膝を立てている。
「気にすることはないよ。君なら何時来ても大歓迎だ」
「ありがとうございます。陛下、本当にこれまでのご厚意には感謝しています。……今日は、まずは今までお借りしていた書物を返しにー…」
するとルーダーベは、後ろに隠しておいた本の束を前へ差し出す。それは大層な量で、長い年月を経て溜まったものだった。
「なんと!…体が弱いのにこんな無茶をしてはいけないよ、ルーダーベ。ヴェルデ!!早く彼女を楽にしてあげなさい」
ヴェルデと呼ばれた傍らの従者はっと短く返事をし、すぐにルーダーベから本を取った。
「すみません、どうしてもボクから返したかったものですから」
「気持ちだけで良かったのだけれど……。でも、ありがとう」
にっこりと微笑むリグ王は暖かな太陽の日差しみたいだ。
しかし、見とれてはいられない。時間が無いのだ。
ルーダーベは、本題に入る。