ノブレス・オブリージュ
荘厳な出で立ち。
外観だけでも高貴さが伺える、雰囲気。いつも、遠くの高台から見ていたこの城は今も変わらず此処にある。
それだけで安心するのは何故だろう。


しかし、もうそんな心焦がれた王宮に来るのも最後なのだと思うと心の奥が痛い。
ルーダーベは、そんな心に蓋をするように頭を横に振る。


「……さぁ、行かないと。手遅れになる前に」


道化と別れた後、真っ直ぐにこの国の王のいる王宮へとやってきた。


王宮の中に踏み入ると、騎士であろう男が近づいてくる。ここに来るのは久しぶりだが、これまでに何度も訪れている。そのせいか、騎士も慣れた風に膝を立て座る。


「お久しぶりで御座います。今日も陛下への謁見で宜しいでしょうか?」


「ああ。よろしく頼みます。……いくら言っても貴方は立っていてはくれないんですね」


「畏まりました。……私達は指導を受けております故、申し訳御座いません。それでは、彼処のソファに腰掛けてお待ちください。案内の者がすぐに参ります」


大袈裟に肩をすくめながら言うと、騎士は去っていった。
だが、肩をすくめるのは指導にあるのだろうか。あれは彼なりのユーモアなのか、判断しづらい。



「……少し、辛いな……」


体がやはりだるい。
彼の言葉に甘えてソファに座る事にした。
持っていた大荷物を横にドサッと置き、背もたれに全体重を掛け目を瞑る。

(……もう、ザァルに気付かれた頃だろう。怒ってるかな……?だけど、)

「……巻き込む訳にはいかない……」


軋む心に気づかない振りをする。今までもそうやって生きてきた。今更だ。
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