ノブレス・オブリージュ
「お待たせしました。ご案内……」
途切れた声にルーダーベは目を開ける。そこには騎士の装いをした、青年。
しかし、その青年の翡翠の瞳とその右目の下の傷は見知ったもので。なるほど、言葉が途切れたわけだ。
「……案内、お願いできますか?新しい騎士さん」
ルーダーベは、穏やかに笑った。そうして何も聞くなと釘を刺すのだ。昔からの知り合いだから効く技である。
「…か、畏まりました」
騎士は、クルリと方向を変え背を此方に向ける。
しかし、すぐにまた顔だけ向き直し、
「私に付いてきて下さい。……ゆっくり行きますから、ご安心を」
と言った。
ルーダーベはそれに頷き、体を労るように立ち上がった。
本当にゆっくりと自分の体を気にして歩いている前の騎士に、思わず口角を上げてしまう。
茶色の髪や、翡翠の瞳はとても見慣れたものなのに
この大きな背中は、自分の知らないものだ。
何となく、感じた時の流れに少し隔たりを思わせた。
さぁ、もう謁見の間はすぐそこ。もう来ることのない王宮で、親友の晴れ姿を見ることが出来た嬉しさで、不安など何処かへ行ってしまったようだ。
「此方です」
騎士のその言葉に顔を上げた。
謁見の間への重層な扉が開かれる。ルーダーベは、迷わずに中へと進んでいく。
そして、騎士とすれ違うその瞬間、
「おめでとう、シームルグ。…スゴく似合っている。……じゃぁ、………サヨウナラ」
そして、扉は閉まった。
シームルグと呼ばれた騎士ただ、その扉を見つめていた。
途切れた声にルーダーベは目を開ける。そこには騎士の装いをした、青年。
しかし、その青年の翡翠の瞳とその右目の下の傷は見知ったもので。なるほど、言葉が途切れたわけだ。
「……案内、お願いできますか?新しい騎士さん」
ルーダーベは、穏やかに笑った。そうして何も聞くなと釘を刺すのだ。昔からの知り合いだから効く技である。
「…か、畏まりました」
騎士は、クルリと方向を変え背を此方に向ける。
しかし、すぐにまた顔だけ向き直し、
「私に付いてきて下さい。……ゆっくり行きますから、ご安心を」
と言った。
ルーダーベはそれに頷き、体を労るように立ち上がった。
本当にゆっくりと自分の体を気にして歩いている前の騎士に、思わず口角を上げてしまう。
茶色の髪や、翡翠の瞳はとても見慣れたものなのに
この大きな背中は、自分の知らないものだ。
何となく、感じた時の流れに少し隔たりを思わせた。
さぁ、もう謁見の間はすぐそこ。もう来ることのない王宮で、親友の晴れ姿を見ることが出来た嬉しさで、不安など何処かへ行ってしまったようだ。
「此方です」
騎士のその言葉に顔を上げた。
謁見の間への重層な扉が開かれる。ルーダーベは、迷わずに中へと進んでいく。
そして、騎士とすれ違うその瞬間、
「おめでとう、シームルグ。…スゴく似合っている。……じゃぁ、………サヨウナラ」
そして、扉は閉まった。
シームルグと呼ばれた騎士ただ、その扉を見つめていた。