未定
1
“秋の夜は釣瓶落とし”
四季ある中で一番切なく暮れていく秋の夕方に向かい、母はよくこう呟いた。
橙でもなく、赤でもなく、その時々で変わるん秋の夕暮れ。
「その時見るその人自身で色は違って見えるんだろうね」
「色から発するもの自体の主張は変わらないけれど、受け取る側次第で変わらない色もきっと変わってくるんじゃないかな」
どう思う?
そう言って、貴方は優しく振り向いた。
いつもの穏やかな笑顔が夕暮れの切ない色に照らされ、私はすぐには言葉を返すことが出来なかった。