fragile
私がふて腐れたように言うと、里沙は心配そうに顔を覗きこんでくる。
「彼氏さんって、名前なんて言うの?」
「……俊也」
「俊也さんってどんな人?」
「ばかだよ!!勉強嫌いだし、スポーツのことばっか考えてるし。なのに考え方女々しくてさ、一人で行動できないんだよ?グループの中にいるのが大好きで、よくいじられててさぁー。あ、しかも変態なんだよ!?自分家でAV鑑賞会とか開いて……」
はっと我に帰った。
里沙は薄く微笑みながら、首を軽く縦に振り、話の続きを促すような合図を送っている。
「……まぁ…こんな感じ」
「歩って、俊也さん大好きなんじゃん!」
「そんな…!あんなやつ…っ」
「本当にそう思ってたら、あそこまで知らないと思うよ?」
鋭い里沙の言葉。先が研ぎ澄まされた刃物のようなそれは、私の胸に突き刺さる。
そりゃ…
もとに戻りたいよ。前みたいに、仲良しになりたいよ。
だけど…だけど……。
自分の気持ちを飲み込んで、里沙に笑顔を向ける。
「まあ…好きというか、ほっとけない感じかなあ!」
「そかあ…。まあ頑張ってよ」
「あーりがとっ」
再度里沙は微笑み、私の後ろ髪をいじりだす。
頭皮が引っ張られる感覚に身をゆだね、私は無気力状態になっていた。
昨日あんなこと、言わなきゃよかったな……
俊也、落ち込んだかな…
「次、26番ー」
「ぁ、あ!はいっ」
-
無事身体測定も終わり、次は…体育館で一年間の流れの確認。
体重が増えていたことにがっくりと肩を落としていると、里沙がまた私の髪をいじりだす。
「ねえ、里沙ー」
「なーに?」
「さっき言ったメル友いるじゃんー」
「んー」
「プリ画送ってもらったんだけどさぁ」
「え!見せて見せて!!」
里沙はぴょこぴょこ跳びはねて、小さな子供のように興奮し始める。
先程保存したてのプリをみせると、里沙は少し眉をひそめた。
「かっこいいけど…ちゃらそうじゃない?」
里沙が小さな声でそう漏らす。
私はたかしをかばう体勢に入った。
「え、そう?普通にかっこいいけどー」
「私の好みではないことは確か!」