fragile
里沙は自信満々にそう言う。
私は少し呆れた表情を浮かべ、薄く微笑んでみた。
最初は自分だって、たかしのことをよく思っていなかった。
だけど今は、否定されるとすごく頭にくる。
たった数時間前の自分が嘘のようだった。
-
暖かい春の木漏れ日が差し込む。時刻は12時を越えた。
まだグループが確定していない状態で迎えたお昼。大体出席番号の上下の人と食べるのが妥当だろう。
私は里沙と机を共有し、二人だけでひっそり食べることにした。回りのチャラチャラした女子とは、どうも気が合いそうにないからね。
目の前に里沙がいて、しかもご飯中というのに、私は携帯を手から離さなかった。
まだたかしと連絡を取っている。こんなにポンポンとメールが返ってくる人も珍しい。
ウインナーを頬張りつつ、里沙の話に耳を傾ける。
里沙はゆるいウェーブのかかったロングヘアーだ。大きくくせがついたその髪は、少し大人っぽい印象を持たせる。
一番の特徴といえば、太いフレームの眼鏡をかけていることだろうか。前髪を真ん中からわけ、おでこを覗かせた、出来る女風とも言える。
里沙の話は面白かった。そして里沙を観察するのもまた面白い。話を聞きながらついつい見とれてしまう。
「あーゆみ?」
「あ…ごめんっ」
ぼーっと里沙を見続けていた私の顔を覗き込んで、里沙は首を傾げた。
「大丈夫?」
「全然大丈夫だよー」
「彼氏さんのこと?」
あ……。俊也…。
言われてはっとした。
別に俊也のことを考えていた訳ではなかったのだが、里沙に問われて我に帰る。
「べっ、別にあんなやつ…!どうだっていいよっ」
「うーん…でももう2年になるんでしょ?このまま別れちゃったりとかないよね?」
「……多分」
「えー!!だめだめ!歩別れちゃったらだめだよ!」
「うーん……」
「なんか今日元気ないよねぇ」
「いやあ…うんー」
ぐだぐだな返事しかできなくてすまなかったなぁ…と思ったときにはもう遅く、里沙はふて腐れてしまった。
「いやっ、今はたかしとメールしてるしー」
「たかし?」
「ああ、さっきのメル友ー」
「ふうーん…。本当にそれでいいの?」